外付け海馬

備忘録

2023-03-26から1日間の記事一覧

全体小説としての泉鏡花『風流線』

泉鏡花の大作『風流線』『続風流線』。これら二作は実質的に一つの作品といって問題のない小説です。 これは、藤村操が華厳の滝で哲学的自殺をした事件や、維新後の近代化における国家的事業としての鉄道建設、偽善的慈善事業家の造形、江戸及び明治における…

第一章には名高い紳士、ラ・マンチャのドン・キホーテの人となりと平生とを述べる。(『ドン・キホーテ』島村抱月・片上伸訳)

名はわざと省くが、ラ・マンチャのある村に、久しからぬ前、長押《なげし》の槍、古い楯、痩せ馬、狩りのための猟犬などを備えている紳士の一人が住んでいた。羊肉よりも牛肉の多いゴッタ煮、大方の晩は肉《にく》生菜《サラダ》、土曜日には屑肉、金曜日に…